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何となく、善女龍王

 夢枕獏の陰陽師シリーズでこの龍王が登場した。文中では「女性」の形状をしたものとして描写されていた。小説上の要請(※)で「女性」形として登場したものであろうか。そう言えば、子供の頃読んだ空海の伝記マンガ(今思えば多分に伝承マンガである)でも「女性」として表現されていた記憶がある。これも「善女」という名前から女性として表現されるたのだろう。この龍王の「性別」については何となく気になるので、簡単に整理してみた。。
 ※:まあ、同書の中にはソメイヨシノと思われる桜の描写があったり、同じ著者の別の小説では空海が「唐辛子」入りの料理を食べたりしているので、実際のところは判らない。

 善女龍王は空海が神泉苑で請雨法を行った際、感得したとされる。「善如龍王」という表記もあるようだ。ただし、この龍王について説く儀軌はないとのこと。また、請雨経法を修する場合には勧請されないようでもあり(※)、何ともつかみ所がない。
 ※:法隆寺蔵「請雨経法指図」(寿永2年:1183)。ただし、神泉苑にはその当時から善女龍王社があった可能性が高いので、勧請されなかったとまでは言えないかも。

 絵画や彫刻に表現された善女龍王はざっと調べた結果、少なくとも次の5パターンがある。

パターン1
 神泉苑の出来事そのものを描写した重文「高野大師行状図画」では大蛇の頭の上に乗った小さな金色の蛇として描かれている(性別不詳)。

パターン2
 金剛峰寺に伝わる平安時代の国宝「善女龍王像」(久安元年:1145)では「唐風の官人」姿で裾から尾が少し出ている。これが標準的な像容とされ、写本も多く描かれているようである(男性)。近代では田村宗立もこれに倣った「善女龍王像」を描いている(この絵が私にとってこの龍王の性別に注意を向ける切っ掛けとなった)。

パターン3
 法隆寺には鎌倉時代の「厨子入善女龍王立像」(彫刻)があり、これは神将の姿をとり、髭を蓄えた老相で、竜を背負い、亀の上に立つ。前述の官人風とは全く形状が違い、二十八部衆に見られる龍王の造形に近いものと言える(男性)。伝来の経緯が不明で、実際のところ、この尊像の名称を確定することはできないそうである。

パターン4
 七尾美術館蔵の長谷川等伯(信春時代)筆「善女龍王像」(石川県指定文化財)は三鈷剣と如意宝珠を持物とた童女形である(女性)。ただ、この像については清瀧権現との関連性も指摘されており、善女龍王像としては特異なもののようだ。
 清瀧権現は醍醐寺の守護女神で、沙掲羅龍王の娘と伝えられていることから、提婆達多品に登場する「沙掲羅龍王女」のイメージ(童女)がこの図に投影されたのかも知れない(等伯は熱心な日蓮宗信者でもあったようだし)。女性に化する龍体(蛇体)の護法神としては日蓮宗では七面大明神が有名であるが、この他にも善女龍王と関連づけられた女神達が各地にいるようである。

パターン5
 江戸時代の仏師・円空が残した彫刻群の中に、十一面観音を中尊として善財童子と善女龍王を組み合わせた三尊像があり、実物を見たことはないのだが、パターン4に近い造形になっているようだ(女性)。


 結局、善女龍王はその名前とは裏腹に、オッサンであるのが図像的には正統であるようだ。ただ、儀軌もないところからパターン2が生み出されたことや、近世初頭にいたってパターン4に飛躍するところなど、この龍王を巡る伝承・願望・情念の混沌状況が伺えて興味深い。

参照サイト
高野山霊宝館
石川県七尾美術館
高賀癒しの郷
清瀧権現-Wikipedia-
参照図録
『天部の諸尊』高野山霊宝館(1994)
『東寺国宝展』京都国立博物館・朝日新聞社(1995)
『修羅と菩薩のあいだで』京都市美術館(2005)
『聖徳太子と国宝法隆寺展』特別展「聖徳太子と国宝法隆寺」実行委員会(2005)
『神仏習合』奈良国立博物館(2007)

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